【コラム】建物を期間の定めをせずに貸した場合の解除について

建物を貸すとき、一般的には期限を定めます。例えば、賃貸マンションは2年とか3年の契約のことが多いでしょう。オフィスもおそらくはそれくらいの期間が設定されていることが多いと思います。しかし、法律上は、期限の定めずに建物を貸すことも可能です。また、実際に、古い物件だと期間を決めていない場合もあるようです。また、家族や親族を当面の間という感覚で住ませていて特に期限を決めていないという場合もあると思います。このように、期間を定めていなかった場合に、賃貸借契約を解除して退去してもらいたい場合、どうすればよいでしょうか? 

1、建物賃貸借において期限を定めなかった場合

 建物の賃貸借であれば、原則として、借地借家法が適用されます。マンション、アパート、などの居住用の物件も、オフィスや店舗などの商業用の物件も、適用される条文自体は同じです。(後述の一時使用目的の場合等を除く) そうすると、期限の定めがない場合は、27条が適用され、解約の申し入れから6カ月で契約が終了することになります。すなわち、同法27条は「建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。」と定めます。

 ただし、同法28条に注意が必要です。すなわち、同条は「建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」と定められており、正当事由が求められています。条文にも書かれている通り、賃貸人・賃借人それぞれが建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況や現況、立退料の提供の有無や額により、正当事由の有無は判断されます。

 賃貸人側の事情としては、自分や家族が自分で使う必要がある場合には比較的正当事由として強く、一方、建て替えや売却により収益を挙げたいという理由は一般には比較的弱いと考えられます。ただ、建物が老朽化していて速やかに建て替える必要がある場合や、建て替えの計画が具体化していて既にほかのテナントがすべて立ち退いていてそのテナントだけが残っているような場合には比較的正当事由があると認められやすいと考えられます。この辺は、建物の利用状況や現況という文言ともかかわってきます。一方、賃借人側の事情としては、引っ越し先が容易に見つかるかどうか(例えば高齢かつ試算もなく引っ越し先が見つけにくい場合には否定する方向に考慮されうる)、その場所でなくてはならない理由(例えば商店で場所を変わると売り上げが低下すると思われる場合)、などが考えられます。

 立退料は必ず必要とは限らず、正当事由が強い場合には立退料なしで認められる場合もありますが、多くの場合は、立退料の支払いが必要です。立退料の額は多くの場合、賃料の何か月分というような計算をしますが、引っ越し費用なども考慮して算出する場合もあります。いずれにせよ、立退料については、決められた計算方法はないので、個々の案件に応じて、過去の類似事例も参考にしつつ、金額を考えていくよりないと思います。

 なお、「当初は期限を定めていたが、自動更新条項は入っておらず、かつ、期限の際に更新手続きをしなかった」場合は法定更新となるので、その場合も、期間の定めのない契約となり、上記のように6カ月前の通知と正当事由が解約の要件となります。

 また、1年未満の期間を定めた場合も、借地借家法29条に従い、期限がないものとされます。すなわち、法29条は、「期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。」と定めています。(ただし、一時使用目的であると認められた場合を除きます)

2、使用貸借において期限を定めなかった場合

 一方、使用貸借、すなわち、無償での利用の場合は、借地借家法の適用はないので、民法の原則に基づくことになります。そうすると、期間の定めがない場合、使用の目的を定めたかどうかによります。使用の目的を定めた場合は、目的に従い、使用と収益を終えた時点で終了となります(民法597条2項)。なお、期間の定めがない場合において「(同項の)目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは」には貸主からの解除も可能です。一方、目的を定めなかった場合は、いつでも解除ができます(598条2項)。

*条文は改正後の民法

 期間の定めがない使用貸借は、借主の保護は比較的弱いものであるということができるでしょう。なお、使用貸借は原則は無償での貸借を意味しますが、まったくの無償ではなく、月々何らかの金銭の支払いを受けていた場合でも、その額が固定資産税に相当する程度であれば使用貸借と判断される可能性が高いと考えられます。

3.一時使用目的の建物賃貸借において期限を定めなかった場合

 一時使用目的の建物賃貸借は借地借家法の解除の制限が適用されません。すなわち、法40条は「この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。」とします。それゆえ、この場合は、民法の原則に戻ることになります。ただし、一時使用目的であるといえるためには客観的にそのようなものであることが分かる必要があり、そうすると、期間も定められるのが一般的です。一時使用目的だが期間の定めがないという場合というケースは想定が難しいと思います。

 

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