【コラム】一時使用目的の建物賃貸借とは?

一時使用目的の建物賃貸借とは?

 建物の賃貸借については、通常、借地借家法により規制され、契約期間や契約解除に関して、制約があります。それらの多くは強行規定であり、当事者間の事前の合意により排除することはできません。すなわち、法30条は、「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。」と定めています。ここで、「この節」とは「第三章 借家 第一節 建物賃貸借契約の更新等」を指します。これによって、契約期間、契約解除の条件等については、賃借人に不利な特約は効力を持たないようになっています。例えば、期限の定めのない建物賃貸借の場合に、「賃貸人が賃借人に通知すれば理由の如何を問わず1カ月後に契約は終了する」と定めても、6カ月前に通知しないといけないとする27条1項、正当事由を必要とする28条、に違反して無効になってしまうわけです。

 これは、賃借人保護のためです。すなわち、強い立場にある賃貸人が弱い立場である賃借人に著しく不利な内容の契約を強いることで賃借人の生活や営業の基盤が脅かされることを避ける必要から、借地借家法においては契約期間や契約解除の条件等について、規制することにしたものです。

 しかし、そうすると、イベントの運営本部として数日間だけ使いたい、とか、短期間の単身赴任の間だけ借りたい、といったニーズに合わない部分が出てきます。そこで、法40条は「この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。」と定め、一時使用目的の建物賃貸借については、第3章全体を適用しないことにしました。

一時使用目的の建物賃貸借と認められるためには?

 一時使用目的の建物賃貸借と認められるかどうかは、当事者の主観(双方が一時使用目的であるという合意をしていたか)、のみならず、客観的にみて一時使用目的だといえるか(使用の目的、貸主側の事情、契約期間など、など)をも考慮して、決定されます。まず、当事者どうしで一時使用目的であることが明確にされていたこと、特に、いつ、あるいはどのような場合には返還するかが明確にされていたことが必要ですが、それ以外にも、期間が比較的短いこと、目的に照らして短期間で終了することが予定されていたと考えられること、などが重要です。

 裁判例をみると、海外転勤中の人が、退去日を明確に伝えてその日までには出ることを約束させたうえで約2か月間貸した事例では、一時使用目的だと認められています(東京地判平成24年5月18日LEX/DB文献番号25494658)。もちろん、これは一例であり、これほど短期の場合にしか認められないというわけではありませんが、退去日(あるいは「遅くとも何日まで」という期限)を決めることと、期間が比較的短期であることは重要だと考えられます。

一時使用目的の建物賃貸借の場合、契約期間や解除に関してはどうなるか?

 一時使用目的の建物賃貸借の場合、借地借家法の契約期間や解除に関する定めは適用されなくなるので、民法の定めによることになります。解除については、617条1項「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。」が適用され、建物の場合は3カ月で終了することになります。もっとも、一時使用目的の場合は基本的に期間の定めがあるはずなので、この規定が適用される場合は少なく、あらかじめ定めた期限で終了できるという点が重要でしょう(借地借家法適用の場合のような正当事由がなくても更新を拒絶できるし、法定更新も適用されません)

 一時使用目的の建物賃貸借は、賃貸人にとっては、あらかじめ定めた期間が過ぎたら返還してもらえるという点で、負担の軽い仕組みといえます。一方、賃借人にとっては、保護が弱いといえます。それゆえ、退去をめぐって、賃借人が一時使用目的を否定し、退去を求める賃貸人との間で争いになる場合もあります。一時使用目的の建物賃貸借という仕組みは建物所有者にとっては便利ですが、実体を伴うものでないと、借地借家法適用の建物賃貸借であるとされて予定されていた時期に退去を求めることが認められなくなる恐れもあります。そういう意味では、本当に一時使用目的であることを前提に契約しても大丈夫か、個々の場合に応じて、よく検討する必要があるでしょう。

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